○石井英夫1,2・Hans Jorgen Cools 3・西村久美子1・村上二朗2

ナシ黒星病菌のDMI剤耐性菌にみられるCYP51遺伝子の変異
Ishii, H., Cools, H.J., Nishimura, K., Murakami, J.: Mutations in the CYP51 gene found in DMI-resistant isolates of Venturia nashicola.

近年,ナシ黒星病の防除に重要な各種DMI剤に耐性菌が発達し,現地圃場においても薬効低下がみられている.ナシ黒星病菌の耐性機構の一つを明らかにする目的で,DMI剤の作用点であるステロール脱メチル化酵素の遺伝子CYP51を解析した.黒星病菌を単胞子分離し,培養で形成させた分生子の懸濁液を実用濃度でフェナリモルを散布したナシ苗木に接種して,薬効低下を確認した耐性菌と培地検定で感受性低下が認められた菌株を用いた。本菌のCYP51の塩基配列(Cools et al., 2002)に基づき設計したプライマーでPCRとダイレクトシークエンシングを行って野生型配列(NCBI GenBank Accession No: AJ314649.1)と比較した結果,CYP51にはG60S,Y102N,D291G,S310P,P324S,G428R,及びG445Dなどのアミノ酸置換を伴う変異が見出され,これらの変異を3つもしくは4つ持つ耐性菌株もあった.また,CYP51のY102NやG428R変異はDMI剤感受性菌にも検出された.耐性機構を理解するためには,今後CYP51やトランスポーター遺伝子の発現解析も重要と考えられる.

1農環研・2吉備国際大・ 3Syngenta)