○石井英夫・黒崎 敦・村上二朗

イネ褐紋病菌Nigrospora oryzaeは本来アゾキシストロビンに感受性、フラメトピルには低感受性である
Ishii, H., Kurosaki, A. and Murakami, J.: Nigrospora oryzae isolated from rice is sensitive to azoxystrobin but less sensitive to furametpyr intrinsically.

紋枯症状を示すイネからはイネ紋枯病菌Rhizoctonia solaniとは別にイネ褐紋病菌Nigrospora oryzaeがしばしば分離される.この菌の薬剤感受性を現地からの分離菌とMAFFジーンバンク保存菌を用いて検定した.菌糸生育に対するQoI剤アゾキシストロビンのEC50は没食子酸n-プロピル1mM添加PDA培地上で1ppm以下となり、本菌は高いベースライン感受性を示した.一方,SDHI剤フラメトピルのEC50はYBA寒天培地上で10ppm~100ppm以上と高く,この薬剤の使用履歴とは関係なく本菌が低感受性であることが明らかになった.イネ(コシヒカリ)の苗にフラメトピル125ppmを散布し,褐紋病菌2菌株を接種したところ,発病は全く抑制されなかった.対照の紋枯病菌3菌株には90.7~100%の発病抑制がみられた.SDHI剤の作用点であるコハク酸脱水素酵素のSdhBサブユニットには,他の菌でSDHI剤耐性に関与するP225やN269,H277のアミノ酸置換はみられなかった.SDHI剤にもともと耐性を示す菌(自然耐性菌)において作用点変異以外の要因が関与する可能性が示唆される.

(吉備国際大)