○石井英夫1,2・今元一海1・木村 豊3・峯本正志4

薬剤無散布圃場におけるナシ品種‘豊華’の黒星病・黒斑病抵抗性
Ishii, H., Imamoto, K., Kimura, Y. and Minemoto, M.: Resistance of the pear cultivar ‘Yutaka’ against scab and black spot diseases under no fungicide-sprayed conditions in the field.

ナシの良食味品種‘豊華’は病原菌の接種試験において黒星病と黒斑病に高度複合抵抗性を示した(石井ら,2010).そこで,2012年,茨城県つくば市の圃場に苗木を定植後,2017年までの6年間,薬剤無散布条件で自然発病の有無を調査した.対照の‘幸水’には毎年黒星病が発生し,平均発病葉率は32.2%,また‘南水’の黒斑病発病葉率は37.3%であった.一方,‘豊華’には試験期間を通じて黒星病は全く発生しなかった.‘豊華’の葉にごく稀に黒斑病類似の症状がみられたため,菌を組織分離して培養後,抽出したDNAを用いてPCRを行った.rDNA-ITSの塩基配列によりAlternaria属菌と同定された菌株につき,ナシ黒斑病菌のAK毒素生合成遺伝子クラスターに含まれるASTS1の検出(渡邊ら,2004)を試みたが,すべて陰性であった.以上のように,‘豊華’は薬剤無散布の圃場においても黒星病と黒斑病に強い抵抗性を示した.但し,‘幸水’や‘南水’と同様赤星病には罹病性で‘豊華’の発病葉率は15.6%であった.

1吉備国際大・2農環研・3埼玉県久喜市・4茨城県つくば市)