○渡邉久能1・今元一海2・木村 豊3・石井英夫2
ナシ品種‘豊華’における黒星病(Venturia nashicola)の発生
Watanabe, H., Imamoto, K., Kimura, Y. and Ishii, H.: Occurrence of scab disease on the pear cultivar ‘Yutaka’.
2013年5月に大分県農林水産研究指導センター場内(大分県宇佐市)の殺菌剤無散布圃場において,黒星病・黒斑病複合抵抗性のナシ品種‘豊華’の幼果や葉柄に黒いすす状の病斑が形成され,病徴や分生子の形態,培養性状からナシ黒星病と診断された.病斑から単胞子分離した3菌株についてPCRで増幅したrDNA-ITSの塩基配列を解析した結果,Venturia nashicolaレース1の基準菌株の配列(NCBI Accession: KF793782)と99~100%一致した.また,分離3菌株をセロファン培養して分生子を形成させ,その懸濁液を鉢植え苗の若葉5枚の主脈部(1枚当たり3か所)に点滴接種し20℃の多湿条件に2日間保ったところ,接種34日後の発病(胞子形成)部位率は幸水でそれぞれ20.0%,73.3%,20.0%であったが,マメナシ12には全く発病が認められなかった.よって‘豊華’からの菌株はいずれも従来のレース1と考えられた.なお,2017年に大分県内の現地4圃場で‘豊華’における黒星病の発生状況を調査したが,発生は認められなかった.2013年の発病は甚発生条件下での特異な事象と考えられた.
(1大分農研セ・2吉備国際大・3埼玉県久喜市)