平成30年7月19日(木)に第6回植物保護シンポジウムが吉備国際大学の南あわじ志知キャンパスで開かれました。兵庫県の試験研究機関や農業改良普及センター、南あわじ市、JAあわじ島の関係者や淡路島内の農家などに加えて、県外の公設機関や農薬メーカーなどから合計74名が参加されました。

 

 

 

 

本学の眞山滋志学長・植物クリニックセンター所長による「植物病害の診断と防除に向けて」の講演から始まり、今回は耐病性品種の利用と農薬創製の最新動向をトピックスとして、タキイ種苗(株)の小杉一夫先生に「タキイ種苗の耐病性育種の現状」、(株)サカタのタネの加来久敏先生には「主要野菜における抵抗性品種開発の現状と今後の展望」と題して特別講演をお願いしました。両社はトマトやホウレンソウなどを中心として育種のトップランナーです。お話ではDNAマーカーを活用した育種に加えて、罹病化につながる遺伝子の破壊と抵抗性素材の選抜など最新の手法が紹介されました。近年新たな遺伝子改変手法として注目されるゲノム編集についても触れられ、とてもタイムリーなご講演でした。

本学の梅津憲治客員教授は、「農薬創製に関する研究の最近の動向」として、同教授が最近監修して出版した『農薬の創製研究の動向-安全で環境に優しい農薬開発の展開』の概要をお話ししました。膨大な情報量の中でもミツバチ毒性で話題性の高いニコチン性殺虫剤や、天然物も含めた生物農薬の将来展望などのお話はとりわけ興味深いものでした。

続いて、淡路特産野菜の病害対策に話題は移り、兵庫県立農林水産技術総合センターの相野公孝先生に「淡路島におけるレタスビッグベイン病耐病性品種の変遷」をお話しいただきました。現在耐病性品種が広く普及して発病による被害は軽減されていますが、発病の見られる圃場の割合は依然として高止まりしているとの指摘がありました。

JAあわじ島営農部の柏木賢治部長からは「南あわじの作物生産における病害虫対策の現状」と題して、レタスビッグベイン病の発生の現状と耐病性品種や薬剤、太陽熱消毒、カラシナの栽培などを組み合わせた総合的な対策のご紹介がありました。また、タマネギべと病や細菌病の発生と対策、とくに気象観測ロボットを試験的に導入して薬剤防除の適期を把握する取り組みなどを紹介していただきました。

南淡路農業改良普及センターの中西幸太郎普及主査からは、地域で一体となって取り組まれている南あわじ市野菜病害虫防除推進会議が紹介された後、「平成30年産タマネギの病害虫発生状況について」ご説明がありました。べと病の発病株率は平年以下であったものの発病圃場率は過去3番目の高さであったことから、今後も対策の徹底は欠かせないことがよく理解できました。

最後は本学クリニックセンターからの研究報告でした。石井英夫教授は、最近初めて登場した「ナシの複合病害抵抗性品種」として、高品質の豊華(木村豊氏育成)や里水、あきひめ(田中茂氏育成)が二大病害の黒星病と黒斑病に強い抵抗性を持つことを、試験結果とともに紹介しました。また、黒星病菌に複数の病原性系統(レース)がある中で、ニホンナシの巾着や新疆ナシの香梨がすべてのレースに強い抵抗性を示すことも明らかにしました。

村上二朗准教授は「キノコ廃菌床を用いたレタスビッグベイン病の防除について」お話ししました。キノコには各種の抗菌性物質等が含まれますので、これら天然物質の力を借りて難防除病害であるビッグベイン病を防除できないか、地域の産業廃棄物である廃菌床を有効利用できないかというもので、多くの学生と一緒に取り組んでいるところです。今後の成果に期待していただければと思います。

今回も全体を通じて、講演後には活発な質疑応答があり、時間が足りない感じがしましたが、本シンポウムが淡路地域の農業の発展に貢献出来ればと願っています。最後になりましたが、講師の方々、それに南あわじ市とJAあわじ島、兵庫県淡路県民局、植物防疫全国協議会の皆様にはシンポウムの共催や後援でお世話になりました。有難うございました。