○石井英夫1・渡邉久能2・佐藤 裕3・菊原賢次4・中尾茂夫5
QoI剤やDMI剤に感受性が低下したナシ黒星病菌のcytb及びCYP51遺伝子のシークエンス解析
Ishii, H., Watanabe, H., Sato, Y., Kikuhara, K., and Nakao, S.: Sequence analysis of cytb and CYP51 genes in Venturia nashicola isolates with reduced sensitivity to QoI and DMI fungicides.
ナシ黒星病の防除にQoI剤が使用される場面が増えている.そこで,QoI剤耐性発達の兆候を早期に把握する目的で,単胞子分離したナシ黒星病菌のQoI剤感受性を検定した.各種濃度のアゾキシストロビンと没食子酸 n-プロピル1mMを添加したPDA培地上で菌糸生育を調べたところ,殺菌剤無散布樹からの50菌株に対するアゾキシストロビンのEC50は平均 0.3ppm,最大 2.2ppmであった.一方,2018年に大分県から分離した143菌株中18菌株に対しては2.2~77.2ppm,福岡県からの19菌株中2菌株には3.5ppmと7.5ppmであった.ベースラインに比べて感受性低下がみられたこれらの菌株につき,cytb遺伝子をPCR増幅後ダイレクトシークエンシングした結果,コドン136の5’側と139の3’側にイントロンの存在が示唆された.次に,PDA培地を用いた検定でジフェノコナゾール感受性が低下していた福岡県産3菌株につきCYP51遺伝子のシークエンスを調べたが,既報(石井ら,2017)のアミノ酸置換はみられなかった.この遺伝子の発現増大など他の要因が感受性低下に関与する可能性もある.
(1吉備国際大・2大分農水研・3秋田果樹試・4福岡農林試・5前JA大分ひた)