〇石井英夫1・渡辺秀樹2
新規SDHI剤ベンゾビンジフルピルの各種炭疽病菌に対する生育阻害活性
【目的】
近年、新規コハク酸脱水素酵素阻害剤(SDHI剤)の開発が続いている。そのうちの一つベンゾビンジフルピル(国内未登録)が数種の炭疽病菌に高い抗菌活性や発病抑制効果を示すことを既に報告した(石井ら、2015;Ishii et al., accepted)。そこで、炭疽病菌の種類をさらに増やして、本薬剤が示す生育阻害活性のスペクトラムを明らかにする。
【方法】
スターチス炭疽病菌3菌株(大分県農林水産研究指導センターより分譲、種は現在同定中)、(国研)農業生物資源研究所ジーンバンクより配布を受けたColletotrichum lindemuthianum、C. graminicola、C. dematiumの各2菌株、及び岐阜県にて採集されたシュンギクや甘長トウガラシの炭疽病菌(種は現在同定中)の各3菌株を供試した。これらをベンゾビンジフルピル(シンジェンタジャパンより分譲)または市販のボスカリド製剤を希釈して添加したGLYE寒天培地(櫻井、2007)もしくはYBA寒天培地(石井・西村、2007)で培養し、両薬剤の菌糸生育に対する阻害活性を調べた。
【結果および考察】
- スターチス炭疽病菌の感受性をGLYE寒天培地で検定したところ、ボスカリドには自然耐性を示した(EC50 > 100 ppm)。一方、ベンゾビンジフルピルには感受性を示したが、EC50値(0.2 – 1.5 ppm)は既報のYBA寒天培地を用いた場合よりもやや高かった。
- YBA寒天培地で検定した結果、スターチス炭疽病菌、C. lindemuthianum、C. graminicola、及びC. dematiumのボスカリド感受性は低かった(EC50 > 100 ppm)が、ベンゾビンジフルピルには高い感受性を示した(EC50 < 0.1 ppm)。
- シュンギクや甘長トウガラシの炭疽病菌に対しても、ボスカリドは100 ppmで菌糸生育阻害活性を示さなかったが、ベンゾビンジフルピルは生育を強く阻害した(EC50 ≦0.2 ppm)。
- 既報と以上の結果をまとめると、ベンゾビンジフルピルはC. gloeosporioides、C. acutatum、C. cereale、C. orbiculare、C. truncatum、C. lindemuthianum、C. graminicola、及びC. dematiumのすべての種にYBA寒天培地上で強い生育阻害活性を示すことが明らかになった。
- これまでのシークエンス解析では、炭疽病菌のsdhB、sdhC、及びsdhD遺伝子に他菌のボスカリド耐性菌で報告されている特徴的な変異は見出されていない(Ishii et al., accepted)。炭疽病菌がボスカリドほかに自然耐性を示す機構については、今後解明すべき課題である。
Growth inhibitory activity of the novel SDHI fungicide benzovindiflupyr against various Colletotrichum species.
○Hideo ishii1, Hideki Watanabe2 (1Kibi International University; 2Gifu Prefectural Agricultural Technology Center)