平成28年7月21日(木)、第4回植物保護シンポジウムが吉備国際大学 南あわじ志知キャンパスで開かれました。兵庫県の試験研究機関や農業改良普及センター、JAあわじ島の関係者や淡路島内の農家などに加えて、県外の公設機関や農薬メーカーなどから合計約60名が参加されました。シンポジウムの模様は、TV会議システムで本学の高梁キャンパスに中継されたほか、7月22日付けの神戸新聞にも掲載されました。
 今回のシンポジウムでは、本学の眞山滋志学長・植物クリニックセンター所長による「植物病院・クリニックの役割」を皮切りに、植物工場での病虫害防除対策をトピックスとして、近畿大学の豊田秀吉名誉教授に「植物病虫害防除型植物工場-静電気工学技術の開発と利用」の特別講演をしていただきました。野菜の施設栽培温室を静電場スクリーンで遮蔽し、うどんこ病菌の胞子や難防除となっている各種ウイルス病の媒介昆虫を捕捉するという画期的な技術は既に実用化段階に入り、国際的にも大きく評価されています。豊田秀吉先生の特別講演
 (地独)大阪府立環境農林水産総合研究所の草刈眞一先生(本学非常勤講師)には、「植物工場、養液栽培の最近の問題点」として、藻の発生と好湿性病害のお話しをしていただきました。清浄野菜と呼ばれるミツバやサラダナの養液栽培でも根腐病などが発生します。そこで、これらの防除方法や藻の抑制方法を詳しくお聞きしました。
 続いて、淡路島内の話題に移り、JAあわじ島農業生産部の出口智康部長からは「南あわじ特産野菜生産の現状と課題」として、レタスビッグベイン病の発生の現状と耐病性品種や薬剤、太陽熱消毒を利用した総合的な対策、タマネギべと病や細菌病の大発生と対策、タマネギの機械化体系について話題を提供していただきました。
 南淡路農業改良普及センターの中西幸太郎普及主査からは、定点調査の結果に基づいた「平成27年度たまねぎ等の病害発生状況」のご説明がありました。今年の傾向として特に生育期間中の高温、多雨によるべと病や細菌性病害の多発が収量減につながったことが紹介されました。特にべと病は、佐賀県をはじめ西日本の多くの県から警報や注意報が出され、次のシーズンへの影響も心配されます。
 本学の石井英夫教授は、「淡路の農作物の薬剤耐性菌問題」について、イネ紋枯病、野菜類の菌核病、タマネギ灰色腐敗病に続いてタマネギやレタスのべと病を取り上げました。べと病には耐性菌発達リスクの高い薬剤も使用されているので、今後十分な注意が必要であるとの呼びかけがありました。また、将来問題となり得るQoI剤(ストロビルリン系薬剤)耐性菌については、遺伝子によって早期に診断出来る態勢が整いつつあるとのことでした。
 兵庫県立農林水産技術総合センターの西口真嗣主席研究員には、「pH降下型肥料の開発によるレタスビッグベイン病の総合防除対策」と題して、政府が進める戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)事業の成果をご紹介いただきました。土壌のpH を下げることでビッグベイン病に感染しにくくする新規肥料の開発経過のほか、総合防除対策の検討状況のお話がありました。
 最後に、本学の村上二朗講師が「遺伝子診断によるレタスビッグベイン病の発生リスク評価」をお話ししました。病原ウイルスの運び屋となるオルピディウム菌を土壌の中から検出し、それを定量して病気の発生リスクを事前に知るための試みで、薬剤処理によってこの菌の量が減ることが示されました。また、南あわじ地域におけるオルピディウム菌の汚染レベルマップや今後の展望と課題も紹介されました。
 
 全体を通じて、講演後には活発な質疑応答もあり、時間が足りない感じもありましたが、本シンポウムが今後の淡路地域の農業の発展に貢献出来ればと願っています。最後になりましたが、講師の方々、それに南あわじ市とJAあわじ島、兵庫県淡路県民局、植物防疫全国協議会の皆様にはシンポウムの共催や後援でお世話になりました。有難うございました。